「やってはいけない!こんなキラキラ女子起業」の4回目です。
過去の記事
以前の記事にも書いたように、
起業するということは、この国の経済・社会活動に参加する
ということです。
ですから当然、社会のルールである法律を遵守しなくてはなりません。
「ひとりで自宅でこじんまりとやっているだけだから、法律なんて関係ない」と、まったく無関心な人も中にはいるようですが、どんなに小規模なビジネスであっても、法律上の最低限のルールだけは知ったうえでビジネスをしないと、大変なことになるかもしれません。
- ある日突然、巨額の損害賠償を請求される
- 急に警察が家にやってくる
といったことは、他人事ではなく、あなた自身に起こりえることなのです。
法律に触れると知らずに違反をしていたのだとしても、
「知らなかった」は通用しません。
ビジネス上の法的なトラブルが起こった時、会社員なら会社が表に立って助けてくれますが、個人事業主は自分で自分を守るしかありません。
大変なことになる前に、必要最低限の知識は身に着けておいてください。
多くの起業家に関係がありそうな、代表的な法律をいくつかご紹介して行きます。
個人情報保護法
自分の個人情報の公開には敏感に反応するのに、お客様の個人情報の取り扱いにはそんなに気を配っていない、という人もいるのではないでしょうか。
個人情報保護法は、たとえひとり分であっても、自分以外の人の個人情報を取り扱う人に適用される法律なので、客数が少ない個人事業主であっても、じゅうぶん取扱いに注意する必要があります。
個人情報保護法は、ビジネスでなくても、たとえば同窓会名簿の管理をしている、といった場合も適用されます。
お客様の個人情報をお預かりする場合、
- あらかじめ利用目的を明示して同意を得る
- 明示した利用目的以外の目的で使用しない
- 第3者に漏洩しないようにしっかり管理する
- 本人からの申し出があれば、削除する
といったルールが設けられています。
パソコンでお客様名簿を管理するのは構いませんが、そのパソコンにセキュリティソフトが入っていないとか、家族共用のパソコンで、家族が誰でもすぐに見ることができる状態だったりすると、何かあった時に管理体制のずさんさが指摘される場合もあります。
また、電話番号やメールアドレスだけでなく、病歴なども個人情報に当たります。
カウンセリングや美容サロンなどでは、お客様から病歴を聞くこともあると思いますが、友だちに「こんな病歴のあるお客様が来て・・・」などと、うっかり漏らさないように注意してください。
参考サイト
著作権法
広告やSNS投稿に関する著作権
他の人がSNSに投稿した画像や、Google画像検索で見つけた画像を、許可なく自分の投稿や広告に使ってしまったことは無いですか?
ネットに公開されている画像は、自由にダウンロードすることができますが、著作権が放棄されているわけではありません。
他人のブログ記事をまるごとコピペして、自分のブログの記事として公開するのは「盗作」だと理解できる人は多いと思いますが、画像も同じことなのです。
広告やホームページ、SNS投稿に使う画像をネットで探す場合は、「自由に使用できます」と明示してある、素材配布サイトなどから探してください。
また、そのようなフリー素材サイトでも、「商用利用は不可」としているサイトもありますので、利用規約をよく確認してください。
画像だけでなく、最近は動画広告や動画をSNSに投稿する機会も増えてきました。
動画に付けるBGMも、画像と同様に著作権があります。CDで発売されている好きなアーティストの曲を勝手に使うことはできません。
BGMも、フリー素材サイトがありますので、動画などのBGMはこうしたサイトから探してください。
また、自分で仕入れて販売している商品のロゴ画像や、製造元のホームページで公開されている写真なども、メーカーに使用許可を得てから使うのが安全です。
商品やサービス上の著作権
手づくり作家さんが、自分の作品として、有名ブランドの商品を模倣したり、そっくりのブランドロゴをデザインに入れるのは著作権違反になります。
たまに偽造ブランド品が摘発されることがありますが、それだけではなく、明らかにそのブランドの商品ではないとわかるデザインの商品でも、ブランドロゴ(もしくはそれに酷似したもの)を入れるだけでも問題になることがあります。
また、キャラクターがプリントされた生地などが市販されていますが、これを使って作った作品を商品として販売するのはNGです。
あくまで自分で使うためだけに使用してください。
飲食店やサロンなどのBGMとして市販のCDを流したり、待合室で映画のDVDを流したりするのも著作権違反となります。
市販のCDやDVDは、あくまで個人的に楽しむためのもので、不特定多数の人に聞かせたり、見せたりする場合には、著作権者の許可を得る必要があります。
著作権に違反すると、権利者から突然多額の賠償金を請求されてしまうこともあります。
慎重過ぎるほど慎重になっておいた方が良いと思います。
特商法(特定商取引法)
特商法は、「実店舗での対面販売」以外の形態でビジネスをしている人のほとんどにかかわりがある法律です。
サービス内容によっては、実店舗での対面販売でもこの法律の規制を受ける場合があります。
この法律は、適用範囲も広く、改正も頻繁に行われています。
そして、この法律に基づいた摘発や行政処分も多くあります。
個人起業家なら、何かしらの関わりがある人が多いと思いますので、後でご紹介する参考サイトなどをよく読んで、しっかり勉強しておくことをおすすめします。
ここでは、細かく説明しているととても長くなってしまうので、個人起業家さんに関りがありそうな取引類型について、簡単に説明します。
通信販売(ネットショップ)
コロナ禍で、ネットショップを開設する人が急増しています。
「BASE」や「STORES」など、簡単にECサイトを構築できるwebサービスもたくさんあるので、気軽にECを始める人も多いと思います。
ですが、ネットショップをはじめとする通信販売は、特商法の規制を受ける業態です。
通販サイトには、どのページからでもワンクリックで表示できる場所に「特商法に基づく表記」を明示する義務があります。
ここには、販売者の住所・氏名をはじめ、商品の実売価格、送料など商品代金以外にかかる費用、支払い時期、配送方法、配送時期、返品方法など、表示すべき事項が定められています。
上述の「BASE」などのECサイト構築サービスを利用すれば、この「特商法に基づく表記」のひな型が用意されていて、必要事項を入力するだけで自動的に必要な場所に表示してくれるので安心です。
しかし、このようなECサイト構築サービスを使わずに、自分のホームページやブログに商品写真と価格だけを載せて販売している人をたまに見かけます。
たとえ商品1個でも、ネットで商品を販売するなら、「特商法に基づく表記」が必要です。
また、「特商法に基づく表記」は、原則として商品の広告にも明示する必要があります。
詳細は、後述の参考サイトなどで確認してください。
連鎖販売取引(ネットワークビジネス・マルチ商法)
多くの方が一度は誘われたり、参加したことがあると思われる「ネットワークビジネス」。
個人を販売員として勧誘する形で商品を流通させ、紹介者に下位会員の売上額の一部がコミッションとして支払われる、という形態のビジネスです。
近年はこの「ネットワークビジネス」という呼称が多く使われるようになりましたが、「マルチ商法」「MLM」も意味は同じで、特商法の中では「連鎖販売取引」と称されています。
広告の内容、勧誘方法、契約方法、契約内容、クーリングオフなど、連鎖販売取引は特商法で厳しく規制されています。
たとえば、お友だちを説明会などに誘う場合は、事前に
- 連鎖販売取引の勧誘であること
- どの会社のどんな商品を取り扱うのか
- 説明会のスピーカー(主催者)は誰なのか
といったことを告げたうえで、参加してもらわなくてはいけません。
「良いビジネスの話があるよ」「ビジネスで成功している人の話が聞けるよ」というだけで説明会に連れて行くのは、事前告知義務違反になります。
ネットワークビジネスは違法ではありませんが、このように、最初の説明会に誘う段階から、特商法で厳しい規制を受けています。
契約時の書面や、クーリングオフ、解約希望者への対応、広告の内容など、各場面場面に規制があり、完全に法に抵触することなくビジネスをするのは、とても難しいです。
ネットワークビジネスに携わる人は、特商法の規制をよく学んだうえでビジネスをすることをお勧めします。
特定継続的役務提供
エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、結婚相手紹介サービス、パソコン教室の7業種限定ですが、これらの業種が、お客様から先に一括で料金を徴収し、一定期間継続的に通って受けていただくタイプのサービスを提供していると「特定継続的役務提供」と見なされます。
たとえば、エステの「10回 痩身コース 〇万円」英会話教室の「3か月コース 〇万円」といったサービスです。
これら「特定継続的役務提供」にあたるサービスを提供する場合は、事前に概要書面を発行したり、契約書を作成する義務などが特商法で定められています。
個人起業家の中には、ご自宅でエステサロンを開いたり、英会話教室や学習塾などを開く人も多いと思います。
提供するサービスの形態が「特定継続的役務」に当たるのかどうか、よく確認されることをお勧めします。
私が開いているパソコン教室は、都度払いで決まったカリキュラムも無いので、「特定継続的役務提供」には当たらないのですが、「パソコン教室」というだけで、特商法規制対象業種としてひとくくりにされ、クレジットカードのアクワイアラの審査に通らなかったり、バーコード決済をなかなか導入できなかったり、ということがありました。
それだけ、特商法の規制を受ける業態に、世間は厳しいのです。
参考サイト
上記の他にも、特商法で規制されている業態はたくさんあります。
「関係ない」「知らなかった」ではまず済まないほど、多くのビジネスにかかわりがある法律です。
ぜひ、上記参考サイトなどをよく読んで、法律に触れないビジネスをしてください。
薬機法
薬機法は正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と言い、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器のおもに広告・宣伝表記を規制する法律です。
2021年8月の改正で、罰則規定が厳しくなったことから、最近話題に上がることも多くなっています。
医療機関でなくとも、化粧品や健康食品を販売している人、エステサロンなどで美容機器を使ったサービスを提供している人にはかかわりがある法律です。
たとえば、
- この健康食品で必ず痩せる
- シミを無くす美白美容液
- おなかの脂肪を撃退するマシン
といった広告表現は、薬機法に抵触する可能性があります。
参考サイトなどをよく読んで、慎重に集客する必要があります。
参考サイト
景表法
景表法(正式名称「景品表示法」)も、誇大広告や嘘の広告を規制する法律です。
上記の薬機法と異なり、美容・健康関係の業種に限定されず、あらゆる業種に適用されます。
広告やSNS投稿などはもちろん、口頭でのセールスや、エステサロンなどでのカウンセリング中の会話の中でも、効果効能を大げさに話してしまうと、後々問題になってしまうこともあるので、じゅうぶん注意してください。
NG表現の一例をあげると、
- 客観的・合理的データを示さずに「地域1番人気店」とPRする(優良誤認表示)
- 客観的・合理的データを示さずに「1度の施術で小顔になれる」と宣伝する(不実証広告規制)
- 客観的・合理的データを示さずに「業界最安値」と宣伝する(有利誤認表示)
また、景表法には、「景品類の制限および禁止」の項目があり、ノベルティなどの来店者プレゼントにも、価格などの規制があります。
客数を増やすために、低価格のサービスに闇雲に高額なプレゼントを付けられないよう規制が設けられています。
参考サイト
この他にも、ビジネスをするにあたっては、たくさんの法律が関わってきます。
法律は「弱い物の味方」ではなく、「知っている物の味方」
と、よく言われることがあるように、知らずに違反してしまってからでは手遅れになります。
ご自身のお仕事は、どの法律の規制を受けているのか、法律でどんなことが禁止されているのか、といったことは、ひと通り知っておくようにしましょう。
音声版(stand.fm)
ほぼ同じ内容を、音声でも配信しています。
Profile
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神奈川県大和市中央林間で完全マンツーマンレッスンの「パソコン教室&サポート マイオフィス」を主宰。
広告業界・経営コンサル業界での経験を生かし、web・SNSなどのビジネス活用をサポート。オンラインだけでなく、チラシなど紙メディアの企画・制作も行っている。
日本おうちサロンマップ協会 事務局もつとめる。
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